月の導き。小笠原諸島 父島のユースホステルから、月明かりを頼りにウェザーステーションへ。

月明かりで自分の影ができる、そんな日は、無駄に外を歩きまわりたくなる。
なぜなら、「月の光に導かれ~♪」という曲のように、そういうときは決まって自分に必要なものに出逢うからだ。
小笠原諸島 父島を旅したときもそうだった。
ナイトツアーのお誘い
その日、私はユースホステルに泊まっていた。
宿でみんなとおいしい夕ごはんを食べたあと、星でも観ようかなと思い玄関に向かった。
びっしり並んでいるサンダルたちの中から愛用のギョサンを探していると『どこ行くんですか?』と後ろから声をかけられた。声の主は、同じ旅人のお兄さん。
「散歩がてら、ビーチまで星を観に行こうと思って」と答えると、『今日は月が明るいからあんまよく見えないかもしれませんねー。』とお兄さん。
するとそこに旅人のお姉さんがやってきて、『あ、せっかくだから、ウェザーまでナイトツアー行こうよ!展望台でひっそり宴会しよう!』とナイスな提案が!こうして月明りを頼りにした冒険が始まった。
月明りでウェザーステーションを目指す
ウェザーとはウェザーステーション(三日月山展望台)のこと。高さは200mくらいで、車やバイクだと10分ほど、歩きだと30分ほどでたどり着く。
道は舗装されているが、念のためギョサンでななく靴に履き替えて出発。
商店で飲み物とお菓子を調達し、ウェザーステーションにつながる山道へ。
街灯はもちろんない。でも、月明かりがほんとうに明るくて、懐中電灯は付けずに歩き続けた。
私が住んでいる地域は決して都会と言えないが、そこらじゅうに街灯はある。だから、こういう行動でさえ新鮮だなと感じてしまう。
草藪のトンネルへ
おしゃべりに夢中で、気づけば頂上まであと少し…そのときだった!
『こっちを通って上まで行こうよ!』
お姉さんの指先には、不自然にぽっかり空いた草藪のトンネル。その奥には人が2人並んで通れるか通れないかくらいの鬱蒼とした道が続いていた。
どうやらお姉さんは昼間にもこの道を通っているらしく、展望台までの近道なんだという。
ビビりの私は大反対したが、2人はまさかのノリノリ。
怖すぎるので、私はお兄さんとお姉さんの間を歩かせてもらうことにし、この道が短いことを願って足を踏み入れた。
月からのメッセージ
月明りは葉っぱたちによって遮断されてしまったので、懐中電灯の光を頼りに歩いた。
いつなにが出てきてもおかしくないよな…と思ったそのとき、コンクリートでできた小屋が目に飛び込んできた!
隣にひっそりと佇んでいた看板に目を向けると、『第二次世界大戦中に使われていた油庫』との説明が。
その奥には作りかけのトンネル、お姉さんに肩を叩かれ振り返った先にはボロボロになった砲台跡の姿があった。
そう、なんとこの道は、戦跡スポットだったのだ!(早く言ってよお姉さん!涙)
この島には、かつて兵隊さんがいた。地上戦は免れたものの、激しい空爆を受けた。
ツルや葉っぱに覆われ、森と同化しつつあるそれらから、わずかな生々しさと悲しさを感じた。
当時ここにいたであろう兵隊さんは、ここで何を想たのだろうか…。
ここ2~3年『未来につなぐ』という言葉が、頭のなかでずっとぐるぐるしている。このタイミングで戦跡に出逢えるなんて…。きっと、月の光の導きによるものだろう。この引っかかりを解くヒントになるような気がしてならなかった。
ようやくたどり着いた展望台は、まぶしいほどの月明かりが降りてきていて、私たちはレジャーシートを広げて小さな宴を楽しんだ。
月や太陽は、いつだって私たちにメッセージを送ってくれているのかもしれない。
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