泳いでおくべきだった石垣島の白保の海

泳いでおくべきだった石垣島の白保の海

今となっては、なんてもったいないことをしていたんだろうと思うことがある。

あの白保の海でせっかく船に乗せてもらったのに、水着が手元にないからという理由で泳がなかったことだ。

走って水着を取りに戻れば、いや、どうせ乾くんだから服のままダイブしておけばよかった、とても後悔している。

アオサンゴの大群落を有する白保の海

白保集落

石垣空港から車で5分ほどのところに、白保(しらほ)というちいさな集落がある。

初めて来たのになぜか懐かしい気持ちになってしまう、やさしく、のどかな雰囲気を持つ場所だ。

ここ白保集落の東側に広がる海は、北半球最大の『アオサンゴ』の大群落を有することで知られており、世界に誇る美しさ。

 白保の海を見てきたお父さん

漁船

そんな白保海岸を散歩していたとき、波打ち際にいた地元の人であろうお父さんが、こちらに向かってこう言った。

『これから漁に行くから一緒に行くか?沖はキレイだよ~』

わたしに言ってるのかとキョロキョロするも、誰もいない。恐らくわたしに言っているんだろう。

お父さんの方を向いて自分で自分を指さすと、お父さんは黙って頷いた。

波打ち際に向かうと『水着は?泳がんともったいないさ』とお父さん。

荷物を一式、近くの食堂で預かってもらっていたので「手元にないんです」と答えると、『まぁいい、乗りなさい』と言って船のエンジンをかけた。

 船の上からでも分かる美しさ

船

船が走り出し、どんどん砂浜が遠ざかってゆく。

『落ちるなよ~』と笑いつつ、迷うことなく操縦するお父さんのようすから、毎日のようにここを行き来しているであろうことが想像できた。

船が止まり、ざわついていた水面が穏やかになると、海の中のようすがハッキリと見えてきた。なんてキレイなんだろう!

白保のサンゴたち

『これから潮が引くから、しばらくしたら顔を出すよ。でもせっかくだから潜ったらいいさ。すこしは泳げるだろ?服なんてすぐ乾く』

お父さんはそう言ってくれたのだが、わたしはこれで充分と言って船で待つことを選んでしまった。

『もったいない。じゃあ釣り糸垂らしてくから、かかったらよろしくね』

そう言ってお父さんは海に飛び込み、しばらく帰って来なかった。

『昔はもっとキレイだった』

海に飛び込む

その間わたしは船でぼんやり。釣り糸を気にしつつ写真を撮ったり、海をのぞき込んで落っこちそうになったり。

今となっては、このとき落ちていればよかったと思う。

お父さんが帰ってきて、船でひとやすみしながら『この海はキレイだ。だけど昔はもっとキレイだった』と話してくれた。

『次はかならず潜ろうね。この海がキレイなうちに』お父さんはそう言ってエンジンをかけた。

これからは、貴重な機会を逃さないようにしよう。