昨年に引き続き、宇都宮大学から令和6年度の社会教育主事講習の一部を担当させていただきました。

社会教育主事講習はその名の通り、社会教育主事になる人を養成する講座ですが、令和2年度からは社会教育士を養成する講座にもなっています。

これによって、教員・行政職員だけではなく、地域の一般の方でも受けられるようになったので、非常に大事な講座です。

今年度も担当させていただいたのは『社会教育事業計画の企画・立案に関する自治会へのインタビュー』です。

それぞれのチームの色が出ていて面白かった

令和6年度 社会教育主事講習 先生たち

今回集まったのは教職員のみ。つまり民間からの参加者はいません。

そもそも民間にとっては非常に参加しづらい講習になっていることもあり、なかなか出ないとは思っていますが、それでも今年は0。一体どんな講習になるのかなぁ〜っと不安ではありました。

前回はスライドの仕様が変わってるとは思わず、「自分の時はこうやったよ」とちょっとした先輩風を吹かせてしまったせいで、参加者の皆さんを混乱させてしまうというトラブルを起こしてしまいました。

なので、今回は最初の説明以外は「聞かれたら答える」というスタイルを徹底して貫き、完全に参加者の力量に任せるということにしてみました。

「先生は世間知らず」なんて言葉を度々、耳にしたりしますが、まったくそんなことはなく、むしろしっかり考え、インタビューをし、レポートをまとめ上げる姿は「先生たちはやっぱりレベル高いよな」と思わせてくれます。

その上で、仕上げてくるスピードは早いのにレベルが高いというチームや、最後の最後まで作り続けているチームなど、それぞれの色が見えたのは昨年と違うところだなぁと。

完全に自由にするとこんな風になるんだと感じられた一幕でした。

自治会の人を捕まえるのは行政の協力が不可欠な場合がある

今回も自治会長(区長)をお呼びする形でした。

しかし、自治会長という立場は、「ちょっとこの日に来てほしいんだよね」と言ってもなかなか来てはくれないことを今年度も痛感させられました。

前年は地域の皆さんとまったく知り合いではなかったので、繋がるには大変苦労し、いろんな人の協力を得て、なんとかお呼びすることができました。

今回は対象の地域で活動も始まって、自治会長の方と知り合いになっていたので、これはカンタンに呼べるかなとタカをくくっていました。

しかし、実際には自分の声では呼べず「行政のほうから連絡がないと…」という形になってしまう。

きっと、そういう風にやっている自治会もあるんだろうと、今回も行政の方にご依頼し、なんとかお呼びすることができたのでした。

ソルティー
ソルティー

この活動は、さまざまなネットワークを予め作っておくことが重要だなぁと感じます。

自治会の苦労と3名の区長さんの活躍

今回、区長という地域を主導する立場の3名にお越しいただいて、自らの経験を語ってもらいました。

参加者の皆さんが出していたレポートをまとめた結果からですが、こんなことをやっているようです。

現在の課題
  • インフラの老朽化
  • 地域格差(隣の地区は栄えているが…)
  • 少子化
  • 高齢化
  • 地域の分断(さまざまな行事がストップし続けている)
  • 行事に協力してくれる人が減っている
  • 物価上昇により、活動予算が減った
  • 定年が70歳になったので、区長の交代も遅くなっている

土木関係の経験を活かし、下水道をはじめとした生活インフラの整備に力を入れています。常に住民が住みやすくなることを考えて、住民と行政をつないでいます。

独居老人が多くなってしまっているので、買い物に行く足がない。様子を見に行ったり、話し相手になったり、カラオケ会を催したり、孤独にならないようにしている。

意見をよく聞く。それに対して行動を起こす。相手との信頼関係をしっかり構築するやり方をしてきた。地域に何もおきない日常や、家族の幸せを守ることが私の幸せ。

3名に共通する自治会で大切にしていること
  1. みんなのメリットを考える
  2. 長同士の繋がり
  3. 仲間を大切にすれば、仲間も増えていく。仲間が多ければ、やりたいことや、できることも増えていく。
  4. トップダウンにならないように、若い人の意見も聞く

住みよい地域のために行っている活動が、区の活動ではなく、市役所の仕事と捉えられることが多い。結果として、自治会があることのメリットが伝わらず、加入も減っているのではないかと感じているようです。

これからはレポートを読んだ僕の感想となりますが、自治会をなくすのはカンタン。それを維持するために現在の区長さんたちはさまざまな工夫を積み重ねているんだなと思います。

共働き世帯の増加、役員をやりたがらない、会員も増えない。その結果、自治会がなくなる。そして地域が破綻して生活が益々大変になる…という構図が見えてきます。

自治会をなくしてから復活させるのはカンタンではないし、誰かの役に立つ、地域を住みやすくしていくという意識が消えてしまうと人間として支え合う文化そのものを消してしまうのではないかとも感じました。

子どもを連れていって、これが社会教育と伝える

令和6年度 社会教育主事講習 子どもの姿

今回は夏休みになっているので「子どもが付いていきたい」とうるさく、最近は連れ回しています。

今回もカメラマンなどの役割を与え、子どもであろうがしっかり働いてもらいました。

ですが、この子どもを連れていく狙いは他にもあります。それは自治会の皆さんの雰囲気を柔らかくする効果と、教育の機会はどこにでも転がっていると実感してもらうことです。

自治会に関わる方は基本、子どもが大好きだと思っています。そもそも地域のために…というのは、自分たちのことも含め、未来に住むであろう子どもたちのことを思っていろいろ奮闘することだからです。

案の定、顔もほぐれていい感じになりました。

そして、先生たちには教育の機会は学校だけではないということを実感してもらうのも大切です。

『社会教育』についてどっぷり浸かってもらう講習ですが、そこに子どもの姿はありません。

「この子は今日、皆さんが頑張る姿を見せることによって育てられます!ありがとうございます!」

と冒頭で挨拶。

先生たちは子どもたちがいると、スイッチが入るようなので、教育の機会は地域でも行われているんだと少しは実感してもらえた…かもしれません。

まとめ

令和6年度も社会教育主事講習をさせていただきましたが、教職員が地域を知る機会は益々高まっていると思いますし、地域も社会教育という意識を持つことが大事だと思っています。

これからもできることで協力していけたらと思います。